産前休業を短くして出産直前まで働くと、育休手当の判定はどう変わる?
産前休業はフルに42日取るのが当たり前。そう思っている人は多いはずです。けれど産前休業は、本人が請求したときに初めて取れる権利であって、義務ではありません産前休業は出産予定日の6週間前から請求すれば取得・厚労省「働く女性の心とからだの応援サイト」。法定の範囲で出産直前まで働き続けるのは、本人の自由です。そして、その選択は育児休業給付金の受給判定にも関わります。
注意したいのは、短くできるのは産前だけだということです。産後休業(56日)は本人の請求の有無にかかわらず就業させてはならない期間で、短縮の選択肢は基本ありません産後8週間は就業不可・産後6週間経過後は本人請求かつ医師の許可で就業可・同上。だからここで話題になるのは、もっぱら産前の42日(出産予定日を含めた42日間で、開始は予定日の41日前。多胎は98日=予定日の97日前)をどう扱うか、です。
産前を短くすると、働いた日が「完全月」を積み増す
受給要件のひとつは、育休開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある完全月が12か月あること受給要件②・厚労省パンフ2025改訂版 p.10(11日に届かなくても賃金の基礎になった時間が80時間以上ならカウントされます)。産前休業の期間はふつう無給なので、その間は賃金支払基礎日数が立たず、その月はカウントされにくくなります。
産前を短くして出産直前まで働けば、本来なら休んでいたはずの日が出勤日になり、賃金支払基礎日数として数えられます。月の基礎日数が11日に届いて完全月がひとつ増える、という流れです。勤続が浅い人や、直近2年に働けていない月が多くてぎりぎり12か月を狙っている人ほど、この積み増しが効きます。
産前をフルに取ると「判定窓」が広がる
ここにトレードオフがあります。産前休業は無給で連続30日以上になるので、受給要件の緩和(2年→最長4年)の対象ですやむを得ない理由による30日以上の賃金未払期間を2年に加算・業務取扱要領59523。緩和では、無給で連続30日以上休んだ日数のぶんだけ判定対象の2年の窓が過去へ延びます(仕組みは「産休・育休が次の窓を延ばす」を参照)。
つまり産前をフルに42日取れば、産後56日と連続した98日ぶんの無給期間が緩和対象になり、窓が98日ぶん過去へ延びます。古い側にしっかり働いた月が眠っているなら、それを窓に取り込めるかもしれません。逆に産前を短くすると、無給ブロックが短くなって緩和日数が減り、窓は狭まる方向に動きます。短くすれば完全月が増え、フルに取れば窓が広がる。どちらが有利かは、その人の過去の働き方しだいです。
数字で見る、損得が分かれる場面
具体例で見ます。産前休業をフルに取れば連続98日(産前42日+産後56日)が緩和され、窓は2年+98日まで広がります。産前を直前まで詰めて休みを14日に短くすると、緩和は連続70日(14日+56日)に縮みますが、本来休んでいた28日のうち実働ぶんが今月の賃金支払基礎日数に乗り、この月が新たに完全月として1か月カウントされます。
直近はしっかり働けていて、足りないのが過去の1か月という人なら、産前を短くして手前で完全月を1つ積むほうが届きやすい。反対に、直近2年では12か月に届かず、窓を過去へ延ばせば昔フルタイムで働いた月を拾える人なら、産前をフルに取って98日ぶん窓を広げるほうが有利になります。同じ「産前をどう扱うか」でも、結論が逆に振れるわけです。
さらに完全月は、育休開始日から1か月ごとに応当日で遡って区切られます完全月は育休開始日の応当日で1か月ごとに区切る・業務取扱要領(育児休業給付)59523イ。月の途中の日付で区切られるため、産前に働いた日がどの完全月に入るかは育休開始日しだいで変わります。区切りの端に乗るか乗らないかで、積み増した1か月が活きるかどうかも動きます。
体調と母性保護が最優先
ここまで損得を見てきましたが、妊娠中は体調と母性保護が何より優先です。産前を短くするかどうかは、給付金の判定のためだけに決めることではありません。妊娠中は時間外・休日労働や深夜業の制限を請求できますし、負担の重い仕事から軽易な業務への転換も請求できます妊娠中の軽易業務転換・時間外労働等の制限・厚労省「働く女性の心とからだの応援サイト」。働ける状態でないなら、無理に出勤を続けて完全月を狙うべきではありません。
自分の場合、どちらが得か試してみる
産前を短くするのとフルに取るのとで結果がどう動くかは、過去2年の働き方を一つずつ数えないと見えてきません。本サイトの判定ツールは、Step1の詳細設定にある「産前産後休業の期間」で産前休業の開始日を変えて試算でき、緩和の日数と完全月のカウントの両方に反映して判定します。産前をフルに取った場合と短くした場合を並べて、結果がどう変わるかを確かめてみてください。受給要件の全体像は受給要件のまとめ、賃金支払基礎日数の数え方は賃金支払基礎日数の数え方も参考になります。
最終的な取り扱いは個別事情で変わることがあるため、確定前にお近くのハローワークで確認することをおすすめします。
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